大安に仏滅!?

ごく平凡なサラリーマン一家が念願のマイホームを手に入れたものの、実はその家が欠陥住宅で…。

『お日柄もよくご愁傷様』('96)の和泉聖治監督作品で、同じく橋爪功・吉行和子主演の映画。今回は「欠陥住宅」がテーマですが、『お日柄もよく〜』同様、「おめでたいことと最悪な出来事」が同時にふりかかってしまった一家の大騒動をコミカルに描いています。
抑え目で派手すぎない作りのコメディの中にも、主人公の視点を中心とした「親子」「家族」といった濃いテーマが詰まっており、ラストシーンはどこか昔懐かしい感じのシーンに思わずジーンときてしまいました。主役の橋爪功をはじめとして、吉行和子、松村達雄、左とん平他存在感のあるベテラン俳優や、まだどこか幼さの残る金子賢や酒井美紀、その他個性的な登場人物が勢揃いのキャスティングが物語全体を盛り上げています。

さて、この映画で京本さんが演じられた上村一級建築士という役は友情出演ということもあり総出演時間にしても5分足らずしかありませんが、その短い出演シーンの中で、いつもドラマや映画で目にするのとは全く違う京本さんの演技を見ることができます。
普段はあまり見られない眼鏡姿も見所(?)のひとつではありますが、それよりも注目すべき点は、この役には特徴という特徴がないということです。「特徴がない」ことに注目すべきというのも何だか妙ではありますが、これまでに京本さんが演じられてきた人物像は非常に個性的な役が多いです。出演時間の長短に限らず、例えば「すごくかっこいい正義の味方」だったり「すごく気性の激しい悪役」だったり。しかしこの「大安に仏滅!?」での京本さんは、そのような強烈な個性に当てはまるものがありません。
流石にスーツがよくお似合いでエリートらしい雰囲気は感じさせられるものの、いつもの京本さんなら「うわ〜素敵〜!」「ちょっと怪しいね〜」など、他の登場人物から何かしらの外見に関する形容文句がつきますが、この役にはそういったものがありません。唯一劇中で説明されているのが、主人公の息子・雄平の知り合いであるという事実や、娘がひそひそと口にした「ワイドショーによく出てる欠陥住宅の専門家だって」という説明的なセリフくらいで、ファンであっても「この人の事をもっと知りたい!」とは思わないような“ごく普通”の役です。妖艶でもなく、極悪でも胡散臭いわけでもなく、ただ淡々と仕事に励みながら、ほんの少しだけ困った表情になるところなど、上村建築士は京本さんの中に眠っていた(?)「自然な演技」を引き出している貴重な役に思えます。普段、強烈なキャラクターを演じられることが多いだけに、この僅かな出番の中にもかなりの意外性を感じてしまうのは私だけでしょうか。今後もこのような自然な役をもっと見てみたいものです。

欠陥住宅というテーマに関しては、ある意味我が家も遠からずといった状況であるので笑えない部分もありましたが(苦笑)、なかなか共感できてしまう部分も多かったです。約2時間の中に「欠陥住宅」という専門的な分野と「家族」という二つのテーマを取り入れたため、少々描写が浅い部分もありましたが、魅力的な俳優陣の力もあり、「その後この一家は(家は)どうなったのだろう?」と思わず気にかかってしまうくらいでした。京本さんの出番はほんの僅かではありますが、映画全体としても一見の価値はある作品だと思います。

1998年作品

Written by:竜歌

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