雪華葬刺し

<スタッフ>
監督:高林陽一 原作:赤江瀑 脚本:桂千穂 撮影:藤井秀男

<キャスト>
若山富三郎 京本政樹 宇都宮雅代 他





雪華葬刺し、この作品はそのエロティックともいえる映像からよくポルノ視されることがありますが、この作品の中に流れる芸術性はそのエロティックな映像をしても、高く評価されるべきではないでしょうか。
この作品はそのエロティックな映像に流されがちですが、その底流に流れているものは、刺青というものにとり憑かれた男達の狂気にも等しい執着であり、そしてその男を廻る女の情念であり、またその執着と情念に挟まれた親子の愛憎劇でもあります。

 この話は女の美しい肌と刺青とに魅入られた恋人を持つ茜という女性が恋人・藤江田の切望により身体に入れた刺青の彫り師・大和経五郎の遺言により京都へと向かう新幹線から始まります。その彼女の思い出を辿る形で、ストーリーは展開していきます。

彼女は女の肌と刺青とに魅せられた恋人・藤江田がその肌に刺青を持つ女・春奈を情人としており、肌に持つ刺青がゆえに手離せずにいることから、その女に負けたくない思いと、藤江田への思いから彼の願いに従い、刺青を入れに京都にいる大和経五郎、通称彫経の許に行きます。

そこで彼女と、彼女との決意とを見た彫経は彼の最後の仕事として彼女の肌に刺青を入れることを了承します。
彼の流儀に従って墨を容れることを念押しする彫経にそれを承諾した茜でしたが、彼の流儀とは男と交わる女の肌に墨を容れるというやり方でした。そのやり方に戸惑いながらも茜は藤江田への思いが故に彼の流儀に従い、肌に墨を入れ始めます。
その際に茜と交わる役目をなしたのが、彼の弟子である春経と言う青年でした。春経との交わることに困惑しながらも墨を入れられ、その交わりに溺れていく茜の背に刺青は入れられていきます。

刺青を入れ終わった茜に堀経は弟子・春経に彼女に刺青をさせて欲しいと頼みます。刺青の 為の関係ではあるものの、春常に思慕を抱き始めていた茜はその依頼を承諾します。この時、春経が彼女に彫った刺青がタイトルにもなっている雪華の刺青です。
彼女の背に墨を入れ終えた彫経は彼が刺青に魅入られた自身の過去を独白の形で茜に語り聞かせます。彼が何故刺青に魅せられたのか、そして何故あのような流儀に辿り着いたのか、茜に語って聞かせる彫経は、刺青というものに取り憑かれた自分の執着を断ち切る為に自身の死後、彼女に葬刺しを入れさせて欲しいと頼みます。
そしてそれを了承した茜は彫経の遺言に従って、彼の死後、京都を訪れ、同時に春経の死をも知ることになります。春経の死に疑問を感じ尋ねる茜に、彫経の養女・勝子は彫経と春経との生活を、そして過去を、語り聞かせます。
すべてを話し終えた勝子の手によって、葬刺しを施された茜は結婚間近の恋人・藤江田を置いて一人東京へと戻ります。

 これがこの話のあらすじですが、この話に流れているのは、刺青に取り付かれた男と、そして その男への情念に身を焦がす女という二組の男女と、そしてその一人である母の憎悪に操られる息子の五人による愛憎劇であるとも言えるような気がします。
母の憎悪としか言いようのない情念に操られるままに短い命を散らす薄幸の青年・春経を演じているのが若き日の京本さんです。母から背に刺青を入れられ、刺青という宿世を背負わされながらも、刺青を学ぼうとするストイックな春経青年を、まだ少年の面影を残す京本さんが初々しさを感じさせる演技で好演しています。
母から呪縛を与えられたかのような憎悪の故に命を絶つ春経青年の姿を演じる京本さんの姿には、哀しいまでに純粋な、そして若いが故に頑なな青年の姿を見て取ることが出来るように思えます。
また、この映画の一つの魅力となっているエロティックな春経少年と茜との情事の場面では、 刺青のためとは言え、女性との交わりに罪悪感を抱いているような、哀しそうな、それでいて悩 ましい表情なども見せてくれています。そして若々しく美しい肌に入れられた見事な刺青もまた 京本ファンとしては見逃せない点ではないでしょうか?

1982年作品

Written by:水無月涼音、Drawn by:藤枝

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