里見八犬伝

<スタッフ>
製作:角川春樹 監督:広瀬襄 脚本:鎌田敏夫 深作欣二

<キャスト>
静姫:薬師丸ひろ子 犬江親兵衛:真田広之 犬塚信乃:京本政樹 犬坂毛野:志穂美悦子 犬飼現八:大葉健二
犬田小文吾:苅谷俊介 犬川荘助:福原拓也 玉梓:夏木マリ



「星よ、導きたまえ」と白く輝く弓を引く薬師丸ひろ子の姿が印象深く、あの当時TVコマーシャルで何度も目にした記憶があります。構想10年、制作費10億円、角川映画10周年として製作された映画です。 

京本政樹という役者の存在を世間に広く認知させた、最初の映画作品でありました。

 原作は、『南総里見八犬伝』江戸時代、1814年〜1842年まで28年かかって書かれた作品で、日本の古典文学でも最長を誇る、曲亭馬琴(滝沢馬琴)作の勧善懲悪伝奇物語です。

 原作のあらすじは、安房の国の城主里見義実に悪女玉梓の怨霊が憑き、怨霊と因縁により義実の娘、伏姫と飼犬の八房との間に、「仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌」の(儒教的道徳観を表す)八つの玉が生れます。

 伏姫の死によりこの玉が八方に分散し、それぞれの玉を持って生まれた八人の八犬士たちが、苦難に出会いながら、互いに因縁の糸に引かれて出逢います。

 それぞれの境遇や生前よりの因縁を知った八犬士たちは、里見家に忠義を尽くし、主君を守るために活躍するという、勧善懲悪、因果応報の理念に貫かれた物語で、舞台は房州(今の千葉県の一部)を中心に、関八州から甲信越の一部にまで渡って展開するスケールの大きな作品です。

過去に何度も人形劇、映画など作品化されていますが、本作は鎌田敏夫が新たに書き下ろした、原作から更に発展した物語をベースに、薬師丸ひろ子、真田広之という若手スターを機軸に、斬新かつ大胆な超スペクタル青春感動巨編として仕上がっています。


 本作の物語は、里見義実に蟇田定包の一族が滅ぼされ、その怨みが百年後に蘇り、定包の妻玉梓、その子蟇田素藤らがついに城を乗っ取るところから始まります。

危うく逃げ延びた里見成義の一人娘、静姫は里見家の再興を誓い、武蔵のおじ大田資正の元を目指します。執拗な追っ手を逃れ、霊玉を持つ八犬士の二人と出会い、里見家にまつわる因縁と自分の使命を知った静姫は、残りの犬士たちを探す決意をします。

やがて集まった光の八犬士たちは、闇の軍団、素藤、玉梓らに最後の戦いを挑み、彼らの城へと向かって行きます。


 京本さんが演じたのは、他作品では主役の犬塚信乃役。信乃といえば、昔から二枚目の美剣士のイメージなのですが、京本さんの信乃は期待を裏切らない、これ以上は無いほどの美剣士ぶりで、当時アイドル雑誌などでも特集が組まれるほどでした。

 信乃という名は女性名ですが、これは「女の子として育てると無事に育つ」とうい言伝えに従い、母親がつけたもので、成人するまで女装で過したりと、その意味でも、女性と見紛うばかりに美しい京本さんにはピッタリな役柄でした。

 キャンペーン中の落馬事故により、怪我を押しての出演だった京本さん。そんな事情など露ほども感じさせない、文字通り体当たりの演技を披露してくれます。

出演者の大半がJACのメンバーという、アクションシーンにおいては不利な立場であるのに、持ち前のバイタリティで微塵の見劣りもせず、むしろその存在感を際立たせることに成功しています。

 特に素晴しいのが、犬坂毛野役の志穂美悦子と戦う場面。お互いの宿命から、敵同士として出会ってしまった二人が戦うこのシーンは、日本のアクション女優の第一人者、志穂美悦子を相手に互角に剣を揮い、納得できる仕上がりに見せるというのは、当時若手だった京本さんを思うと、非常な努力がいったこととお察しします。

本作の華でもある二人が戦うという絵的にもオイシイこの場面は、美しい中にも哀愁が漂い、見る者に二人の置かれた哀しい境遇を感じさせました。

後に出演したトーク番組で、師匠大川橋蔵さんが衣装や鬘のデザインをして下さったと仰っていましたが、物語の世界観とマッチしたその出で立ちは、二枚目振りを引き立たせ、十二分に京本さんの魅力を引き立たせてくれました。

また、セリフの無いシーンでもこまいかい動きが美しく印象的で、前編に渡り京本さんが力を入れていたのだなと窺い知る事が出来ます。余談ですが、犬川荘助役の福原拓也君をさり気なく庇ったり誘導したりしているところが、個人的には見逃せませんでした。


 悪女玉梓を演じた夏木マリ、妖之介を演じた萩原流行、船虫役のヨネヤマママコなど、敵役が個性的でその怪演ぶりも見所のひとつです。

 当時の話題としては、人気絶頂だった主演の薬師丸ひろ子が初めてのラブシーンを演じるというのでかなり騒がれておりましたが、煽り文句の割にはおとなしめな印象がありました。このシーンよりも、夏木マリの血の池の入浴シーンの方がよほどエロティックな気がしたのですが、見終わってから思い返すと、逆にサワヤカさが出ていてよかったと思いました。それがメインじゃないのだし。


 この映画は日本では勿論大ヒットしましたが、アジアでの人気も高く、本作に影響されたと思われるアジア映画もたくさん作られました。SFX部分はともかく、アクションシーンは水準が高く、評価も高かったようです。さすがJAC。またファンタジックなその内容から、欧米でも人気があり、アジア映画マニアの間では要リスペクト作品として名前が挙がるほどらしいです。千葉真一が出演しているからかもしれませんが。



 役者京本政樹を語る上では外せない本作品。申し分のない美剣士ぶりと、正統派二枚目役者の京本政樹を堪能できる貴重な作品です。

【皆様の感想】

 


1983年作品

Written by:桂、Drawn by:竜歌

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